緊張のおにぎり

つい1週間前、傘を無くした。持ち物をうっかり置き忘れるのは日常茶飯事だが、今回は違う。原因は絶対にあのおにぎり、、、!

 

先週、レポート系の課題を立て続けに4つやったせいか、頭がショートして全く動けなくなった。だが迫りくる就活。友達が早期先行の話をしていて、「やべー早く元気だそう」と焦った。

 

そんな中家でゴロゴロしていると、家の本棚のdancyuの見出しが目に入った。テーマはおにぎり。そういえば、この雑誌に載っていた大塚にある「ぼんご」に行きたかったんだった!
(日本一を謳っていて、おにぎり好きで知らない人はいない凄い店なのだ。)

 

ベッドからなんとか抜け出し、私は人生初めて大塚駅へ向かった。
店に着いてみると、平日の15時なのにざっと20人ほど並んでいる。一体、どういう人達なのだろう、、、

かく言う私も暇かよという感じだが、なんせ1人で行列に並ぶのも初めてだった。すぐ入れると油断して本も持ってこなかったことが悔やまれた。
手持ち無沙汰のまま、スマホを出したり閉まったりして1時間が過ぎて、やっと店員さんが「お待たせしました〜!」と呼びに来た。

 

案内された席はカウンター。1人だから、ではない。ぼんご、地元の寿司屋的な感じでカウンター席しかないのだ。お客は自動的に全員握り手を見つめることになる。しかも何故かオーダーする瞬間店の雰囲気が

シーーーン

と空気が張りつめるのだ。注文にも勇気がいる。


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ホントに目の前に握ってる人が。緊張する。

 

なんとか腹と心を決め、店員さんを呼ぶ。みんなが何を頼むか見ている。私は明太クリームチーズと雲丹くらげのおにぎりを頼んだ。また、辺りの人の会話が始まる。なんか、ディベートしてピリつくのと同じ息苦しさを感じた。


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ビビりつつ1枚撮った写真。目の前には具がズラリと並んでいる。

 

しばらく待つと、目的のおにぎりが渡された。

手にもつと、まずおにぎりが崩れる限界ギリギリの柔らかさ。凄い。程よい塩加減でプロを感じる。具の一つは、くらげを雲丹で和えたもの。結構苦味が強く大人の味って感じだ。自分では再現不能の美味しさ。
もう一方の明太クリームチーズは、そりゃ絶品である。舌の上でチーズが溶けて。天才、、、!f:id:imasaraaaa:20200126114804j:image

左が明太クリームチーズ、右が雲丹くらげ。

 

そりゃ美味しいのだ全部。
しかーし、文章では伝わらないが、そう、緊張感は続いているのだ。私の食べてる様を、横のおばさんがガン見していた。そして、目の前には握り手がいる。ドキドキというか、ドキマギだ。頑張って書いてみたけど、味、ホントはあんまり覚えてない。

 

食べ終わったらすぐ店を出て、池袋駅ジュンク堂へ駆け込んだ。知らない街でも本屋には安心感がある。心を静めるためにザッピングし、店内のカフェで一息ついて、やっと生き返った。

 

もう、家レベルで落ち着いた。美味しいものを食べるのも、そう甘くはないなぁとしみじみした。1時間程経って、はて誰にこの話をしようと思いながら、家に帰ることにした。

 

帰宅し、この一連のの流れを話した。それを聞いた母、

「雨なのによく行ったねぇ」
「そうだねぇ、、、。、、、?!」

やっと思い出した。本屋に傘を忘れたことを。完全に油断した。雰囲気の差が凄くて、気抜きすぎた。すっとこどっこいである。

 

後に本屋に問い合わせたが傘は見つからなかった。最近雨の日が続いてるが、その都度あのおにぎりを思いだす。美味しいものを食べるには、何かを失うリスクがあるのだと痛感したのだった。

 

ぼんごのHP https://www.onigiribongo.info/