真剣に聞くから、音楽サブスク。
つい先日、私は晴れてデビューした。
Spotifyプレミアム会員の話である。
登録してしまうと、もう沼である。甦りし、音楽の楽しさ。世界に存在する楽曲が新旧問わずいつでも聞き放題なんて、財政システムどないなっとんねんと思う。今更ながら、サブスクリプションに感動している。あの妙に頭に残るSpotifyプレミアムのCMからも卒業だ。
実のところわたしは、音楽サブスクは無課金でも充分曲聞けて、事足りる。むしろシャッフル再生は新しい楽曲に出会うことができて、最高とすら思っていた。
けれど、CD屋に行き、ハッとした。これでいいのだろうか。
緊急事態宣言解除後、とにかく沢山の音楽に触れられる場所に行きたいと思い、わたしは営業再開していた渋谷のタワーレコードへ行くことにした。
何年かぶりに足を踏み入れた渋谷タワレコは、相変わらずCDがぎっしり棚に詰め込まれていた。初めて行った時、地下1階から9階まであるなんて天国かとテンションが上がったのを思い出しつつ、エスカレーターで3階(J-POP、J-ROCK、J-PUNKフロア)を目指す。
けれども、フロアに到着しても、CDを前にしても、中高生時代の高揚感がないのだ。店内の配置などほぼ変わってないのに、どこに行けばいいのか勝手がわからず茫然とした。
「とりあえず好きなアーティストの棚に行き、新譜は発売されていないと知りながらも、CDの品揃えを眺めうろうろする」
ということが出来なくなっていた自分に気づき、寂しさと危機感を覚えた。
思えば、音楽の楽しみ方が今と5~10年前では全く変わっている。
私は中高校生の時、とにかくCDを買って聞く(クレジットも読む)、雑誌でインタビューを読む、ライブを実際に見に行く、ラジオでいい曲を発掘する、スペシャやMTVでMVや音楽チャートを見る、好きなアーティストのルーツになった曲を漁る、ライブ開演前や転換中に流れている曲を後で検索する等、いろいろな方法で曲やアーティストや音楽について貪欲に知ろうとしていた。知りたいと当たり前に思っていた。
それが今や、CDのフラゲどころか発売日も把握していないし、シャッフル再生ばかり利用しているからアルバム全曲をじっくり聞くことがない。
ここからは完全に自論だけれど、ここ4、5年の音楽シーンを取り巻く日本のリスナーはかなり変化したと思っている。(自分も含め)
まず、あまりにも音楽を聴くことが簡単になってしまった。スマホを最低2回タッチするだけで、音楽は再生できる。
例えば、CDとウォークマンが主流だった2000年代半~2016年ごろまでは
「CDを買う・借りる→パソコンに取り込む→ウォークマンに取り込む→再生」
の作業が必須だったが、現在は画面をタップするだけに完了だ。
必然的に聞きたい曲だけ聞くことができるようになったため、好みじゃないアルバムの3曲目あたりを忍耐強く聞く必要もなくなった。
(故に真反対のじっくり聞くレコードが流行っていると考えられるけど、話が逸れるのでやめとく)
また、無料がいい・安い方がいいという気持ちに、音楽を聞く側が勝てない部分も大きいと思う。メジャーレーベルから発売されるアルバムは大概3000円前後で高くて、特に学生なんてホイホイ買えない。その代わり違法アプリで音楽を聴くことが容易な場合、人間つい揺れ動いてしまう。(もちろん違法はダメ)
他にも要因はいろいろあるけれど、楽曲を1曲ずつ、丁寧に聞かないようになっているなと思う。アーティストに対し、「ちゃんと曲を聴いてなくてすまん」という申し訳ない気持ちで一杯になった。
ここで従来だったら、またはオールドスクールなアーティストだったら「CDを買おう!」てな話の流れになりがち。
でも今回、わたしがタワレコで「ハッ」とわかった大きな気づきは、アーティストが真剣に作り上げた曲を、聞く側も真剣に聞こうという姿勢だ。
制作方法に進化はあれど、作り手の熱量やパッションは変わらないはず。どの時代でも、いいものだったら相応しい対価を得るべきだ。
というわけで、ひとまず、Spotifyプレミアム会員になったのだった。セットリストのように考えこまれた楽曲順序に沿って、さまざまなアルバムを聞きなおしている。冒頭で書いた通り、非常にエンジョイしている。
そして、ときめきがあり次第、CD現品をタワレコに購入しに行こうと妄想中である。
あ〜、お金貯めよう。
それまで待っててね、タワレコ。
ちなみに最近、愛用のウォークマンが壊れてしまった。変わるべき時か、、、。