【展示】パンデミックを感じた。「Chim↑Pom  May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」

パンデミックがテーマの展示が開催されている?しかもChim↑Pomだと?!

また外出自粛になる前に見とかなきゃ!と思い、Chim↑Pom の個展、「May,2020,Tokyo/A Drunk Pandmic」に行ってきた。

 

 

Chim↑Pomとは何者?

Chim↑Pomは2005年から活動しているアーティスト集団だ。鋭い独創性と行動力で、意表を突くような、たまに刺激が強すぎて捕まるのでは?と心配になるような作品を作り続けている。過去には渋谷センター街で、ドブネズミを自ら捕まえてピカチュウ風の剥製にしてしまう衝撃の作品を発表している。

今回の展示も、わたしは大変ビクビクしながら会場へ向かった。

 

①A Drunk Pandemic

昨年、Chim↑pomマンチェスターインターナショナルフェスティバルで制作・発表したインスタレーション作品。19世紀にコレラが蔓延したイギリスのマンチェスターでは、亡くなった人を地下に大量に埋葬していたそうだ。その廃墟にChim↑pomはビール工場を設置、また公衆トイレをパブに作り替え、来場者に振る舞った。

今回の展示では、観客は工場見学ツアーの一員となり、ガイドに案内をされる様子を映像で体感できる。


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映像を見る展示会場は真っ暗

 

上映されている部屋へ入って、わたしは「ああ、ちょっと、途中退出したいかも、、、」と、出口に行くか悩んだ。

実際に死者が埋められた地下が再現されている展示会場は、真っ暗・地鳴りのような音・ヒヤっとする温度・不穏な空気が漂い、得体のしれない恐怖、臨場感が物凄い。

特にツアーガイドから聞かされる、コレラの死者が多すぎて墓地が不足し、狭い空間に死体を無理やり押し込んでいた生々しい話。そういえば、どんどん新たに墓地が掘られるも、すでに場所が足りなくなっている海外のニュース映像と重なって、現在進行形なんだなと背筋がゾクゾクした。


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ビールの空きビンが沢山並べられている

 

一転して後半では、醸造したビールを、公衆トイレを改造して作った「パブパンデミック」でChim↑Pomのメンバーが振る舞う様子が見られる。ビールを楽しく飲み交わす様子から、過去から学んでいない現代人の愚かさをひしひしと感じた。しかし痛感した割に、わたしは展示を見た後、近隣でおいしいレストランを探し、ちゃっかり評価の高いカレーを食べた。人類は本当にのんきなもんである。


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パブパンデミックを再現してある。


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②May,2020,Tokyo

緊急事態宣言下の屋外で作られた作品だ。サイアノタイプという液体を使って感光させ、看板に文字を焼き付けているらしい。

全貌がわからないコロナが蔓延している街、その空気を吸い込んで作られた作品。速報性もさることながら、あの緊急事態宣言の様子が、目に見える形になっているのは、一言では言い表せない、得体のしれない怖さと、一方で少し安心するような、不思議な気分にさせる。


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感じて、考えさせる

展示を見て、個人的に感動したのは、単純に「コロナに負けるな!」だとか、「すぐに対策を打つべき!」という感情的な主張ではなくて、格差・公衆衛生は感染症の広がりと密接に繋がっている事実を、心に訴えかけてくるところだ。

わたしはここ4か月ぐらいずっと家にいるが、感染者を人数でしかとらえなくなっていく感覚があったし、知らぬ間に自分の内面ばかりに目がいってしまった。外、日本だけではなく世界規模で見ることなんてすっかり忘れている今、ヒリヒリするけれど、見て感じる・考えるべきことがたくさんある展示だと思う。

 

2019年にパンデミックを先取りして題材にしていたことに、「Chim↑Pomやべえな」と思わずにもいられない。マンチェスターの作品はコレラを題材にしているが、こんな状況じゃなかったら、まったく違った感想を持っていたはず。つい最近まで、パンデミックゾンビ映画とかゲーム世界の話だと思っていた。それが今やである。コロナ禍の今見るには、リアリティがありすぎる。さすがすぎる。

 

感染予防のために、いろいろな行動の選択ができるが、ギャラリーも消毒液設置や入場制限など対策はくまなくしてくださっていた。

 

決して前向きな気持ちになる展示ではないけれど、見れなくなっちゃう前に。

 

Chim↑Pom May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic

https://bijutsutecho.com/exhibitions/6007


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展示会場へは搬入サイズのエレベーターでしか行けなかった。一人で乗ると怖いなぁ。終始、ビクビクしっぱなし。